サービス提供者様の今回のシステム開発への想い
地域の交通課題を把握するためには実際の利用状況のデータが必要であり、その利活用を促進するために当社では移動情報統合データ基盤『TraISARE(トレイザー)』を開発・提供しています。一方で、データを取得するために必要となる機器(ICカードの読取機器等)の搭載にかかるコスト面での負担により、データの取得自体に課題を抱えている地域が多く見られます。
そこでこの課題を解決するため、スマートフォンを活用することでデータ取得が難しい公共交通でも導入がしやすく、データ基盤と組み合わせ現状把握が容易に可能な仕組みの実現を目指しました。さらに今回の青森県弘前市の場合はシニアを対象とした取り組みのため、LINEを活用することでデジタルに慣れていない世代でも利用しやすいサービスを構築しました。実際に70歳以上の市民を対象に実証実験を行いましたが、利用者からも「いつもLINEを使っているのでわかりやすかった」等の声も頂き、操作性が大きな課題になるようなことはありませんでした。
結果的に実証からシニア特有の利用状況の把握がLINEとTraISAREの組み合わせで実現することができ、同様の仕組を今後他の地域にも展開していきたいと考えています。
LINEとの連携
利用者の導入障壁がなく、開発者も構築の手間が少ないLINE(API)を導入
主には「シニアでも使いやすいインターフェース」「新たなアプリを導入せずに使うことができる」「開発側にとっても手間の少ない環境で早く構築をしたい」が理由です。
特に今回はできるだけシンプルなチケット機能を想定しており、高機能よりも使いやすさを優先していました。LIFFを利用することで利用者には導入障壁がなく使いやすく、開発者にとってもOS毎のアプリ審査等が不要、認証等のユーザ管理も不要となり狙い通り比較的短期で構築ができ、利用者の操作性の課題もありませんでした。
誰もがわかる操作性を実現。今まで見えなかった高齢者の利用状況が明確化
今回のような紙チケットのデジタル化の実証は当社にとっても初めての取り組みでした。
実際にサービスを提供することで受容性や有用性を確認することができ、特に懸念していた高齢者の利用に関しても、実施前は操作に関しての問い合わせがかなりあると思っていましたが実際にはほぼ無く、想定以上にLINEを活用したことの効果を感じました。また、簡易的な手法による移動情報の取得でも利用実態を十分に把握することができ、TraISAREで地図上で可視化された路線・属性別の評価や、乗降場所については、協力頂いた交通事業者からもこれまで見ることのできなかった高齢者の利用状況を把握することができたとの声も頂くことができました。
システムを組み合わせることで、開発に集中しつつデータ利活用の環境を構築
デジタルチケットの利用状況をデータとして蓄積することで、いつ、どこからどこに、どの路線で移動したか、曜日や時間帯でどのような利用の傾向があるかが把握できるようになります。
実際の利用状況を把握することでデータに基づいた運行計画の検討などへの活用が考えられます。また、Messaging APIを活用し利用促進のためのクーポン配布や、イベントの実施などの施策と組み合わせることで、施策実施の効果や行動変容への影響なども分析することができます。今回はLINEを活用した移動情報の取得とTraISAREを組み合わせ、システム構築しましたが、同様の仕組みを活用すると事業者はサービス開発にリソースを集中させながら、データ利活用の環境を容易に構築できるようになります。