サービス提供者様の今回のシステム開発への想い
「PLAYBACK 9」 は、横浜DeNAベイスターズの試合の名シーンを球団公式のNFT(非代替性トークン)ムービーとしてコレクションできるサービスです。「紙のベースボールカード」をデジタル化したものをイメージしていただければよいかと思います。PLAYBACK 9では選手の実際のプレーをNFTムービーにすることで、選手の活躍をそのまま切り取った新しいベースボールカードを実現しています。2022年4月15日からは、NFTマーケットプレイス「LINE NFT」の場を活用したユーザー間での二次売買も可能になりました。
「PICKFIVE」 は、バスケットボールの試合で活躍する選手を予想してスコアを競うブロックチェーンカードゲームです。現在は川崎ブレイブサンダースの選手が対象となっています。実際の試合のスタッツ(チームや個人の成績をまとめたもの)が反映されるシミュレーションゲームである、ファンタジースポーツの一種です。PICKFIVE は無料で遊ぶこともできますが、LINE NFTで各選手のNFTカードを購入することで、他の人とは違うかっこいい限定カードで遊べるようになります。
これらのプロスポーツとNFTを関連付けたサービスは、試合観戦する際の体験向上を狙って開発しました。自分が遊ぶゲームと連動することでリアルな試合への思い入れが強くなり、さらに試合の中でコレクションしたいと思えるシーンが増える。そうした体験向上の連鎖が起きることを期待しました。
PLAYBACK 9
PICKFIVE
LINEとの連携
仕組みの扱いにくさの障壁を下げるためにLINE Blockchain を採用
プロスポーツを題材にしたNFTカードやNFTファンタジースポーツは、海外では大きな成功を収めている例がたくさんあります。しかし、日本でもトライしている例はいくつかあるのですが、現時点では大成功しているとは言えない状況です。これは、多くの日本のユーザーは、ブロックチェーンを活用する際の仕組みに扱いにくさを感じるからです。潜在ユーザーを掘り起こすためには、利用時の障壁を下げることを何より優先すべきと考えました。そこで、日本人に最も浸透しているITコミュニケーションツールであるLINEを利用できる、LINE Blockchainを採用しました。
ユーザーがNFTを購入する際に最初の障壁となるのが、ウォレットの開設です。例えば、ブロックチェーンとしてEthereumを使う場合には、MetaMaskと呼ばれるウォレットを開設する必要がありますが、ユーザーインタフェースは英語限定であり、そこで躊躇してしまうユーザーが多くいます。しかしLINE Blockchain ならば、LINEのアプリさえ入っていれば、簡単にウォレットを開設できます。こうした優れたユーザビリティは、他に類を見ないものです。また、LINE NFTでは二次流通も可能であるなど、多くのLINEユーザーを潜在顧客にできる日本市場に最適化した取引の場となっている点も魅力でした。
LINE Blockchainを使うことで短期間かつ簡単に開発できた
LINE Blockchain Developersには、ブロックチェーンを利用するために必要な最低限の仕組みが揃っています。このため、サービス提供に向けたアプリケーションを短期間かつ簡単に開発できました。Ethereumを利用するアプリケーションを開発していた際に、ブロックチェーン利用のための基本的な機能が、最初から入手できているため、開発のスタート地点が大きく違うという印象でした。
もちろん、既に完成されているLINE Blockchain API を利用する際には、開発するアプリケーションとの間で、データの形式の合わせ込みなどの調整が必要になります。しかし、この点が開発期間を延ばす障害にはなりませんでした。PLAYBACK 9 のアプリケーションは約4カ月で開発しました。当初は、スケジュールがタイトだと考えていましたが、思いのほか障壁が少なく予定通りに開発が進みました。
NFT発行処理のタイムラグを短くして顧客体験向上させる
PLAYBACK 9 とPICKFIVEのシステムは微妙に構成が異なるのですが、システム内での大まかなデータの流れはほぼ同じです。まず、画像やNFTの中に書き込む情報を運営側が用意。それをブロックチェーンに登録します。その際に、販売する商品であるNFTの種類と実際に発行する枚数を指定しておきます。そして、販売を開始したら、集まったユーザーからの購入意思表示を集計し、抽選して購入者を決めます。ここまで進んだら、ブロックチェーン側にNFTを登録するためのリクエストを投げて、NFTを鋳造(ミント)。購入者に発行したNFTを送付します。
ブロックチェーン上にデータを載せているため、NFTの発行処理は、手元にあるデータベースで行うようなスピード感では進められません。登録のリクエストを投げた後に、ブロックチェーンの台帳に記載されるまでの間に、どうしても一定のタイムラグが発生します。このため、同時処理可能な数など、工夫をしています。パブリクチェーンでは、タイムラグを短くするためにセカンドレイヤーのようなトランザクション処理技術もありますが、LINE Blockchainはプライベートチェーンなので、パブリックなEthereumなどに比べればタイムラグは短くなり、顧客体験は良くなります。