立花 なるほど。寄り添って伴奏していくということで、そういった価値の深堀を普段からされているのが、今回の受賞につながったのかもしれないですね。
野上 それはあるかもしれないですね。
立花 では次に作品についてお聞きします。まずは作品を簡単にご紹介いただけますか。
野上 はい。今回作成した開発したBotは、絵本を作ろうというタイトルで、名前の通りLINEを使って絵本を作成するサービスになります。ユーザーが絵本の世界観や話の粗筋みたいなのを決めると、LINE Botが絵本のページを作ってくれます。
まず、4ページだけ作って、そこからその次の展開をユーザーが選択することによって、新しい4ページ、また選択して次の4ページが作成されるといった感じで、絵本を作っていくサービスです。絵本の生成には生成AIを利用しています。
立花 ありがとうございます。このサービス、なぜ作ろうと思ったのでしょうか?きっかけや背景にあった課題を教えて下さい。
野上 はい。今回のLINE BOT AWARDSには2作品応募したんですけれども、最初に作ったのがこの絵本を作ろうじゃなくて、ゲームブックみたいなBotだったんですね。昔僕らが小学生の時に物理文で読んでいた、区切りで選択肢が提示されて、選ぶと次は何ページへ進んで下さい、みたいなそういう形式のものです。
で、これを友達に触ってもらってフィードバックをもらいました。すると、「生成AIを使っているので待ち時間が長いんだけど、それが逆にワクワクするね」というような内容で、これを子供向けの絵本にして子供と一緒に待っていると、次どんな話が出るだろうねぇみたいな会話が弾んで面白いサービスになるかなと思って。それで作りました。
立花 生成AIを利用するうえで待ち時間はどうしても出てきますし、ユーザーにとっては普通はストレスに感じるものですよね。この作品はそこを放置するでもなく、力技で解決するでもなく、価値と捉えユーザー体験の一部として自然に溶け込ませていることが素晴らしいと思いました。
LINE Botはサクッと、プロンプトはじっくり
立花 次に、技術についてお聞きします。サービスに開発に利用した技術を差し支えない範囲で教えて下さい。
野上 はい。結構シンプルでRailsアプリケーションでLINE BotのWebhookを受け取って処理をしています。絵本生成はOpenAIのGPT-4oとGPT-4 Turboで内容候補のテキストを生成、Dall-E3を使ってページを生成、S3にアップロードして返事を返す、このような流れになっています。
LIFFも利用していますが、こちらもRails上で動いています。ホスティングはHerokuですね。
立花 ありがとうございます。シンプルではありますが、重要なところはきっちりと抑えられているかなと思うんですけど、作るのにどのくらいの時間がかかりましたか。
野上 動くところまで作るのは結構すぐ、数時間ぐらいでBotの基本構成はできあがったんですが、やはり生成AI利用のサービスですのでプロンプトの調整にどうしても時間がかかりました。でも今回、ゴールデンウィーク終了が締め切りだったので、ゴールデンウィーク期間中は時間がある限りプロンプト調整するみたいな感じでしたね。
立花 なるほど、プロンプトの部分、かなりチューニングされているのが伝わりました。やはりコアになる部分ですので、差がついた部分かなと思います。ありがとうございました。
コア機能だけではなく、サービス全体の提供価値にこだわる
立花 では次にサービスの提供価値について、特にこだわった部分や、頑張った、ここを見てほしいみたいな点があれば教えてください。
野上 はい。先ほども少し触れましたが、本作では、選択肢を選んで次の4ページができるのは次の日になります。待ち時間にも価値があり、自然に待ってもらえる。このような体験にしているのは、1個工夫した点かなと思います。
あとは本が出来上がった時に、過去に自分たちの作った絵本を読み返せる機能を用意したり、他の人が作った絵本もランダムに表示できるようにしたりというような作った後も子供と一緒に楽しめるような機能も実装しています。
立花 生成AIで何かを生成するところまでは良く出来ている作品がたくさんありましたが、せっかく作った作品ですし、LINEという多くの方が利用するサービスですのでソーシャル的な要素まで作られているとよりユーザーが長く利用するイメージが湧きやすいですよね。このあたりもとりあえず入れておく、ではなくLIFFでしっかりと作られているのも差別化要因となったように思います。
野上 そうですね。
立花 LIFFはもちろん、今回たくさんのLINEの開発者向けプロダクトを適材適所にご利用いただきましたけれども、何か気に入ったAPIなどあれば教えて下さい。
野上 はい。最近リリースされたものですが、ローディングアニメーションですね。Botが返信を生成していることがユーザーに伝わってとても良いと思います。やはり生成AIはどうしてもレスポンスが遅くなりがちなので、こういうのがあるとユーザーが不安にならずにBotとやりとりできてとてもいいなと思います。
立花 そうですね。あるとないとではユーザーが受ける印象が大きく代わると思います。不安や違和感は小さなものでも積もればユーザー離れの原因となりますよね。
野上 あとはFlex Messageも実現したいUIの実現にかなり役立ちました。子どもと一緒に見ることを想定しているので出来るだけ大きくみせたいというのがあって。
立花 確かに。チャットUIってまだ発展途上のUIだと思っているのですが、各場面で上手くAPI使っていただいてるなという印象でした。
チャットUI × 生成AIの可能性
立花 サービスの今後ですが、何か考えていることはありますか。
野上 絵本なので、絵のクオリティーを上げたいなと思っていて。今は描く絵をプロンプトで生成しているせいもあって、主人公が生成の度に別人になっちゃうんですよね。その辺まだ今は難しいかもしれないんですけれども、主人公の絵はこれだよって決めた指定した上で生成して、絵本のとして統一感のあるようにできるといいなと思っています。
立花 実写では元画像から生成したりっていうのは出来るようになってますよね。イラスト生成でもそれが出来るようになれば絵本として完璧に近いものができるようになるのではないかと思います。
野上 あと、本当は作っている時に製本までできると面白いなと思ったんですけどね。昔は製本用のAPI提供しているところあったと思うんですけど今そんなになくて。そこまで出来ると面白いなと思っています。
立花 デジタル板もそうですけど、アナログなものも手元に残る形に置いておきたいという親のニーズはありそうですよね。
野上 うんうん。
立花 アップデート、楽しみにしています。広告マネタイズなども適宜ご利用下さい。
では最後に最後にこのインタビューを見てくれている視聴者の方に何かメッセージがあればお願いします。
野上 エンジニア目線だとやっぱり生成AIが出てきてから今までできなかったものが結構簡単にできるようになっているのがとても面白いなと思ってて。LINEを使うと、画面設計をあまり考えなくても、結構手軽にBotサービスが作れるので、まだ使ったことない方はちょっと触ってみてもらって何かBotを作ってみると面白いんじゃないかなと思うので、ぜひチャレンジしてもらえたらと。
立花 本日はありがとうございました。
(取材日: 2024年7月: 取材/立花翔, サポート/鈴木敦史)