LINEビジネスチャットで営業・CSの現場を変革 BizCloの挑戦
大場 初めに、Micoworksの企業概要や事業内容についてお聞かせください。
田口 Micoworksは2017年に創業し、LINE公式アカウントを活用したマーケティングツール「MicoCloud」や、会員証LINEミニアプリの「ミコミー」、AI自動架電ソリューションの「MicoVoice」などを開発・提供しているSaaS企業です。単にサービスを開発するだけでなく、お客様の成果を大切にしながら、導入サポートや運用支援も手掛けています。特にBizCloでは、営業やCSの現場での課題解決を含めて支援しています。
大場 MicoworksとLINEヤフーが提供するBizCloは、どのようなサービスなのでしょうか。両社の協業内容も含め、教えて頂けますか。
田口 BizCloはLINE公式アカウントを使ったビジネスチャットのサービスです。具体的には、LINE公式アカウント上で、営業・CS担当者と顧客が1to1チャットを行うことができます。LINEヤフーの協力により、1to1チャットの通数課金が無料であることが大きな特徴で、企業にとっても導入しやすいサービスです。Micoworksは、LINE APIを活用してプロダクト開発を手掛けるとともに、LINEヤフーと協力体制を敷いてBizCloの販売推進にも取り組んでいます。

「BizClo」サービス概要
依馬 LINEヤフーは、基盤となるLINE公式アカウントとAPIの提供を担当しています。BizCloの特徴である、1to1チャットの無料提供も、両社の協業によって実現することができました。もちろん販売推進についても、Micoworksと協力しながら進めています。
大場 両社が協業し、BizCloを提供するに至ったきっかけは何でしょうか。
田口 MicoCloudを提供する中で、保険をはじめとする金融業界のお客様などを中心に、LINEによる1to1チャットを営業やCSで活用したいというご相談を頂いていました。
しかし、従来のビジネスチャットでは、法人による大規模利用が難しかったのが実情です。そこでLINEに精通している我々であれば、その知見を営業DXでも生かせるのではないかと考え、LINEヤフーと共同でBizCloを開発しました。

営業・カスタマーサポート活動における顧客との1to1コミュニケーションの課題
依馬 LINEヤフーとしても、金融業界のように、認知から契約までの検討期間が長い業界で、LINE公式アカウントの活用が進んでいないという課題を抱えていました。
Micoworksから協業のご相談を頂いたのは、我々としてもチャンスでした。金融機関に導入するには、高いセキュリティ基準をクリアした、品質の高いプロダクトでなければなりません。
その点、Micoworksは既に導入実績があり、高水準なLINEソリューションを提供していること、さらに導入後の支援体制がしっかりしていることが大きなポイントでした。また、MicoworksとはLINEヤフーのテクノロジーパートナーとしての長いお付き合いがあります。こうして、今回の協業に至りました。
顧客の利便性とエンタープライズに対応した権限管理を両立
大場 営業やCSの現場で、LINEによる顧客とのやり取りが求められる背景には、どのようなニーズがあるのでしょうか。
依馬 企業側の視点では、顧客とのやり取りが複数のチャネルに分断されがちなことが、従業員にとって大きな負担になっています。
例えば、同じ顧客の情報を管理するために、複数のツールを横断して、管理画面を行き来するのは大変です。また顧客の視点では、自分が最も使いやすいコミュニケーション手段で、課題や問題を解決できることが理想です。特に、保険など緊急性が高い場合には、迅速で確実なサポートが求められます。
LINEを日常生活で利用している人が多いので、顧客が利用しやすいチャネルとして、LINEは最適です。そこで、窓口をLINEに集約することで、従業員体験・顧客体験の双方を向上することができます。

LINEヤフー株式会社 依馬 裕也氏
大場 なるほど。確かに営業・CSの業務とLINEの相性は良さそうです。ただ、従来のビジネスチャットでは、大規模な法人利用が難しかったとのことですが、具体的にはどのような課題があったのでしょうか。
田口 従来のツールでは、やり取りの内容が属人的になってしまい、組織内での情報共有や担当者の引き継ぎができない点が、大規模利用における課題でした。また多くのツールはCSに特化していて、営業に使うことを想定しておらず、ツールの選択肢が限られていました。
加えて、CRMなど外部サービスとのデータ連携もしづらく、エンタープライズ規模の企業ビジネスを支えるツールとしては、やや力不足なのは否めませんでした。
大場 そこで、BizCloを立ち上げたということですね。
BizCloを導入することで、どのように営業・CSでの企業利用における課題を解決できるのでしょうか。また従来のツールとBizCloの違いは何でしょうか。
田口 これらの課題を解決するために、BizCloは、大規模組織での利用に適した権限管理と情報共有機能を提供しています。
異動や退職、不在時の一時的対応など、担当者が変更になる場合でも、権限を変更するだけで、後任への引き継ぎがスムーズに行えます。その際、商談内容や引き継ぎ事項を共有したり、アドバイスを残したりする機能もあります。またBizCloは、顧客の契約状況や、商品の提案状況など、顧客情報も一元管理できます。例えば未契約の顧客を抽出して、そこだけに営業活動を行うことも可能です。
顧客とのコミュニケーションをLINEに統一することで、ツールの乱立を防ぎ、シャドーITを排除することができます。
さらにBizCloには、MicoCloudのマーケティング機能もご利用いただけます。具体的には、アンケート機能や、大規模セグメント配信、ユーザーIDを起点にしたCRMとのデータ連携、Webタグによる行動履歴の取得などが含まれます。かつ、NFCタグと連携させることで、QRコードを読み取るよりも簡単に、LINE公式アカウントに友だち追加できます。従来は難しかった、LINE公式アカウントの機能をエンタープライズでフル活用するビジネスが、BizCloによって可能になるのです。
大場 なるほど。エンタープライズに適した機能が、BizCloの大きな強みということですね。BizCloは幅広い業界に対応可能とのことですが、特に、どのような業種・業態が適しているのでしょうか。
田口 BizCloは、最初の導入先である第一生命保険を皮切りに、まずは保険業界での普及を目指しています。
保険業界は、顧客の人数やコミュニケーションの量が多いため、特にLINEビジネスチャットの強みが生きると考えています。もちろん、銀行、不動産、人材会社、自動車ディーラーなど、多数の顧客との迅速なやり取りが必要な企業は、他にもたくさん存在します。また企業規模が大きくなるほど、担当者の引き継ぎが頻繁に発生します。このような企業であれば、BizCloを導入することで、ビジネススピードの向上というメリットを享受できるのではないでしょうか。
LINEヤフーとMicoworksのシナジーがデータ活用による営業DXを加速する
大場 MicoworksとLINEヤフーの強みを組み合わせることで、ユーザー企業にどのような価値を提供したいとお考えでしょうか。両社の協業を通じて実現したいシナジーについてお聞かせください。
田口 LINE APIの新機能をBizCloの強化に生かすことも重要ですが、今後ニーズが高まるのはデータ活用だと考えています。既に多くの企業が、トーク内容の分析や、AIによる自動化に関心を持ち始めています。今後、営業・CSにおけるビジネスチャットがさらに普及すれば、蓄積されたデータをもとに、業務効率化や、マーケティングのための高度な分析をしたいというニーズが高まるでしょう。既にBizCloを使うと、CRMやマーケティング施策を行うこともできますが、ここにLINEヤフーが保有するデータが加わることで、これまでになかった新しい価値を生み出せると期待しています。

Micoworks株式会社 田口 圭太氏
依馬 営業・CSのDXを進める上で、データ活用は特に重要です。例えば、顧客とのコミュニケーションで、成果を大きく左右するのが、顧客とコンタクトを取るタイミングです。そのためには、ユーザーがどこで友だち追加をしたのか、友だち追加が契約につながったかどうか、顧客のライフサイクルにどんな変化があったかなど、データから様々な予兆を検知することが欠かせません。
そこで、LINEヤフーが持つ行動データと、BizCloが持つあらゆる顧客接点のデータを連携させることで、顧客一人ひとりに最適なコミュニケーションタイミングを見つけ出したり、潜在顧客や隠れたニーズを発見したりすることが可能になるでしょう。プライバシーやセキュリティ面にも十分配慮する必要がありますが、両社の協業によって、様々な新しい価値を提供できるのではないでしょうか。
大場 データは営業DXを進める上での鍵ですね。BizCloが、自社データとLINEヤフーのデータを繋ぐ架け橋になれば、業界全体にも大きなインパクトを与えそうです。
業界のニーズに寄り添い 顧客体験と従業員体験の変革へ
大場 協業の次のステップとして、BizCloをどのように発展させていきたいとお考えでしょうか。今後の展望についてお聞かせください。
田口 まず機能面ですが、BizCloはLINE公式アカウントを基盤に構築されているので、従来と比べて、外部とのデータ連携が格段にやりやすくなりました。今後はユーザビリティの向上に加え、コミュニケーションの改善、CRMやマーケティングツールとの接続、AI連携とデータ活用の強化など、様々な施策に取り組みたいと考えています。
ビジネス面では、我々はBizCloの提供を通して、様々な業界の営業・CSのDXを目指しています。そのためにも、保険業界を皮切りに、業界ごとの課題やニーズを探りながら、機能を拡張したいと考えています。もちろんLINE APIの機能が増えれば、解決できる課題の幅も広がるので、LINEヤフーによる今後の開発にも期待しています。
依馬 プラットフォームを提供するLINEヤフーとしても、今後の機能開発やデータ活用を通じて、営業・CSがより活躍できる環境作りに貢献したいと願っています。例えば、商材のクロージングまでのリードタイムやコミュニケーションの方法は、業界によってまちまちです。BizCloの導入が進むことで、各業界の営業・CS担当者が本当に求めている機能や体験について、さらに深いニーズを把握できるのではないでしょうか。
大場 最後に、営業・CS向けのLINEビジネスチャットの導入を検討している企業に向けて、メッセージをお願いします。
田口 BizCloは、LINEを活用した顧客コミュニケーションの分野において、これまでにないサービスを提供し、課題解決に貢献できると自負しています。今後もユーザーの皆様の声を大切にし、サービスの改良と拡充に取り組んでまいります。Micoworksウェブサイトには、BizClo専用のお問い合わせフォームを用意しておりますので、皆様の課題やご要望をお聞かせいただき、ぜひ導入をご検討ください。
依馬 LINEヤフーは、営業・CS担当者が、顧客に対してより効果的に価値を届けられるコミュニケーションツールとして、BizCloを活用していただくことを目指しています。BizCloは、成約率の向上と顧客満足度の向上という二つの課題を同時に解決できるツールです。これらの課題をお持ちのお客様は、ぜひ一度BizCloへお問い合わせください。きっと課題解決の一助となるはずです。
(取材日: 2025年2月6日: 取材/大場 沙里奈)