ワークスペースの枠を超えて、地域の働き方と暮らしを変える
大場 relarkの事業内容と特長について教えてください。
和田 relarkは、東急株式会社が運営する個人向けのワークラウンジ事業です。2021年4月のたまプラーザ店開業を皮切りに、美しが丘、吉祥寺、那覇の4店舗をオープンしました。移動の合間での仕事場所はもちろん、ご家庭の都合で家で仕事することが難しい場合のリモート勤務など、多様化する働き方をサポートします。たまプラーザ店・美しが丘店では、会話禁止で集中しやすいwork area、WEB会議も可能なlounge area、気分転換にぴったりのswitch areaと3つのゾーンに分けて、その日の気分や働き方に合わせてお好きなエリアで仕事をしながら、リラックスもできる環境を提供しています。
大場 たまプラーザ店・美しが丘店では、在宅勤務以外にも様々な目的でrelarkを利用するお客様が多いと聞きました。具体的にはどのようなニーズがあるのでしょうか。
和田 当初、18歳以上のご利用に限定していました。ところが、地域柄、教育に力を入れているご家庭が多く、お子様をここで勉強させたいというご要望をたくさんいただきました。そこで、小学4年生から高校3年生まで、可能にしたところ、勉強に集中できる、スタッフも常駐しているので安心できるなど、お子様・保護者双方からご好評いただいています。その他にも、高齢者のお客様が、読書のために利用するケースもあります。このように、単なるワークスペースとしてだけでなく、地域におけるサードプレイス的な存在としてサービスを提供しているのが特長です。
大場 一般的なシェアオフィスと比べて、働き盛りの会社員だけでなく、地域密着型で、幅広い年齢層のお客様が利用しているのが印象的ですね。
お客様に情報がしっかり伝わる LINEを活用したプロモーションの手応え
大場 relarkでは、情報発信や顧客サービスなど様々な形でLINE公式アカウントを活用していると聞きました。relarkにおけるLINE活用はどのようにして始まったのでしょうか。
和田 当初はプロモーションツールとしての活用が主でした。たまプラーザ店が新業態の第1号店だったので、とにかく認知を得ることが必要でした。そこで、電車や駅などの広域広告に出稿したり、X(旧Twitter)、Instagramなどあらゆるツールの活用を検討しました。しかし実際に事業をスタートすると、地域のお客様に繰り返しご利用頂いていることが分かりました。そういったリピーターの方に向けて、ダイレクトにキャンペーンやイベントなどの告知をお届けするツールとして最適なのは、LINE公式アカウントだと感じました。大きなプロモーションは行いませんでしたが、たまプラーザ店が入居するビルに来館されるお客様に、友だち追加を促すことで、友だち数が大きく伸びました。その結果、お客様にrelarkの情報をダイレクトに届けることができるようになりました。
大場 LINE公式アカウントを導入したことで、どのような効果を実感しましたか。
和田 毎月のイベント情報を前日にLINEで発信したり、優待価格で利用できる新しいキャンペーン情報を流すことで、当日の来店者数が伸びるなど、プロモーションツールとして成果を挙げています。またお客様に情報がしっかり届くので、お客様が不満を感じるリスクを減らすことができました。つい先日も、設備の不具合で、緊急で臨時休業することになったのですが、日々40人〜50人のお客様が来店する中で、臨時休業の情報がしっかり伝わらないと、お客様に御迷惑を掛けてしまいます。そこで、LINEで臨時休業の告知を行ったところ、アナウンスの期間が短かったにも関わらず、休業日に来店するお客様は、ほとんどいませんでした。このように、お客様に必要な情報をしっかり届けるツールとして、LINEの効果を大いに実感しています。
大場 店舗からの情報発信がしっかり伝わるのは、お客様が日常的にLINEを使っているからこそですね。
プロモーションから顧客サービスへLINEを活用した店舗DX
大場 プロモーションツールとしてだけでなく、LINEを活用したお客様への接客サービスも開始したとのことですが、詳しくお聞かせください。
鈴木 友だち追加が800名を超え、LINE経由のプロモーションで来店されるお客様が増えてきたので、店舗のサービスもLINEで利用できるようになれば、お客様にとっても便利になると考えました。そこで、2023年9月から、LINE公式アカウントで会員証機能の提供を開始しました。具体的には、入退館時の手続きや、個室ブースの予約、スタンプカードの提示がLINEでできるようになりました。
大場 導入から1か月半経ったとのことですが、LINEを活用した入退館などが可能になったことで、どのようなメリットを感じていますか?
鈴木 運営の観点では、受付の業務改善に繋がりました。従来、利用者の入退館は、スタッフが受付時に紙で記録したものをスプレッドシートに打ち込まねばならず、かなりの手作業が発生していました。今は、LINEの会員証のQRコードを読み取るだけで、自動的に入退館記録を取れるので、大幅に手間が減りました。さらにヒューマンエラーが減ったのも大きなメリットです。
大場 業務のデジタル化にもLINEが貢献しているということですね。お客様目線では、LINEの導入はどのように受け止められているのでしょうか?
和田 紙や物理カードが必要なくなり、いつも持ち歩いてるスマホ一つでサービスを利用できるようになったので、お客様にとても喜ばれています。例えば、QRコードをかざすだけで受付が済むので、待ち時間が減って、満足度向上にも繋がったのではないかと思います。また幅広い年齢層が来店しているにも関わらず、LINEによる会員証サービスを、比較的スムーズに開始できたことも評価しています。それだけLINEを日常使いしているお客様が多いのではないかと思いました。
大場 ありがとうございます。まさにLINEは、小学生の方から高齢者まで、幅広い世代が利用するアプリなので、relarkの店舗の特性とマッチしていたということですね。
LIFFアプリで爆速開発 ネイティブと比べて圧倒的なスピード感
大場 ここから会員証機能の開発についてお伺いします。LINEのAPIを使うにあたって、どのような技術を採用したのでしょうか。
吉川 クラウド側は開発会社のR3 Instituteの協力の下、AWSによるサーバレス構成を採用しています。6年前にNewWorkを立ち上げた際も、スモールスタートを目指して同様の構成を取っていたので、今回も踏襲しました。
LINE公式アカウントの会員証機能は、LIFFアプリとして実装しています。ネイティブアプリは、新しい機能を追加しようとすると、開発工数がかなり増えてしまいます。一方、LIFFアプリはネイティブアプリに比べると、比較的開発が簡単で、同じ機能を実装する場合も、少ない工数で実現できるように感じました。実際、LIFFアプリの実装は、特にトラブルもなく、ドキュメントのとおりに開発したら、スムーズに動作したそうです。
また、個室予約機能はMessaging APIを活用しています。利用したい日付を選択することで、利用可能な個室がリストアップされるので、リストの中から希望する個室の予約していただくことが可能になっています。Messaging APIを利用することで、会員証での入場から予約手続きまでLINEのプラットフォーム上で全て完結することができています。
大場ネイティブアプリに比べて効率的な開発が可能とのことですが、実際の開発期間はどのぐらいだったのでしょうか。
吉川 R3 Instituteで実際に開発をしていた期間は、3ヶ月ぐらいとのことでした。ネイティブアプリを開発するのと比べて、スピード感がまったく違うことに驚きました。開発を依頼した側としても、「こういうことをやりたい」と思いついたアイディアをすぐに実現できたことが、すごく良かったです。
LINEによるサービスの拡充と 新しいワークライフスタイルの普及を目指す
大場 今回の取り組みを踏まえて、今後のサービスの展開や取り組みについての構想があればお聞かせください。
和田 LINEについては、先程触れた通り、relarkはリピーターに恵まれています。週に何回も通うヘビーユーザーや、毎週親子で来てくださるお客様がたくさんいます。東急グループ全体としても、ロイヤルカスタマーに向けたサービスを強化する方針なので、relarkもそれに倣って、LINEを活用したリピーターへのサービスを充実させたいと考えています。
吉川 relarkとしては今後も店舗を増やしていきたいと考えていますが、そのためには新しいワークスペースというコンセプトの認知度を高める必要があります。コロナ禍を経て新しい働き方が認知されつつありますが、リラックスした環境での仕事や、カフェと塾の合いの子のような感覚で家族で利用するといった、新しいユースケースは、まだ十分に認知されていません。そこでrelarkはInstagramを開設し、親子で利用したり、家庭教師が生徒を指導したりするなど、様々な活用法を紹介しています。Instagramは新規顧客への認知度向上のため、そしてLINEは既存顧客へのサービス向上のために活用していく予定です。
大場 ありがとうございます。最後にLINEヤフーへの改善の要望などはありますでしょうか。
和田 細かい点ですが、一度LINE公式アカウントの認証を受けると、社名変更の場合を除き、アカウント名の変更ができません。店舗運営上、アカウントを共有する複数店舗からの情報発信時に苦労しているので、変更できるようになったら嬉しいです。
大場 貴重なフィードバックをありがとうございます。本日はありがとうございました。
(取材日: 2023年11月: 取材/大場沙里奈,鍋島理人 サポート/鈴木敦史)