LINE API Use Case
飲食業から教育まで!観光DXで地域を活性化する多角的アプローチとは?
飲食業から教育まで!観光DXで地域を活性化する多角的アプローチとは?
株式会社EBILAB 小田島 春樹氏
2023年11月13日
人件費や原価上昇、エネルギーコスト増加などで収益が圧迫され、主に飲食・小売業・観光業において、難しい課題に直面しています。その中で株式会社EBILABはサービスとして「TOUCH POINT BI」を開発し、LINE公式アカウントと連携した顧客とのオンラインでのつながりを強化することで、新しいビジネスモデルを確立しています。今回はLINEヤフー株式会社 河本 貴史の対談を通して、株式会社EBILABの代表取締役である小田島春樹氏にお話を聞きました。
株式会社EBILAB 小田島春樹氏

株式会社EBILAB 小田島春樹氏

1985年、北海道生まれ。大学卒業後、ソフトバンクグループ株式会社入社。2012年妻の実家が営む「ゑびや」に入社し、店長、専務を経て2012年に妻家業の食堂ゑびやを継承し、代表取締役社長に就任。2018年、第二創業でデータ分析事業のEBILABを創業、啓蒙、教育活動を通じてサービス業へのデータ分析、テクノロジー活用の拡大を目指す。同社の代表取締役CEO。2018年〜MicrosoftMVP(AI部門)連続受賞。2020年第3回日本サービス大賞「地方創生大臣賞」受賞。2019グレートカンパニーアワード2019「ユニークビジネスモデル賞」受賞など他多数受賞。

最先端ITを駆使した食堂を運営する、EBILABの活動とは

小田島 私たちは主に3つの事業を展開しています。1つ目は、店舗ビジネスです。私たちは伊勢神宮の参道で飲食店やお土産店、小売業を展開しており、最近ではテイクアウトのビジネスにも取り組んでいます。また、店舗を単なる商品の販売だけでなく、マーケティングをする場や教育施設としての機能も持たせています。

2つ目は、EBILABというデータ分析会社です。私たちが「ゑびや」を再建した時に行った様々なデータ分析や商品開発・集客の方法を基に、ノウハウをサービス化しました。このノウハウがビジネスとして成り立つのではないかと考え、店舗系のビジネスに対するデータ分析をサービスとして他の事業者に提供することで新たなビジネスモデルを生み出しています。分析サービスやシステムの開発、今回のLINEを活用した効果的な店舗ビジネスの仕組みを考えたりもしていますね。

3つ目は、教育事業です。データサイエンスの育成や企業向けのリカレント教育、大学との連携などを行っています。新たな学びの場を提供し、社会人向けの学び直しを支援しています。これらの取り組みを通じて、私たちは新しい価値を創出し、地域社会に貢献しています。

河本 それぞれの事業が一見異なるように見えますが、共通してデータや教育が関連されてそうな印象です。特に教育事業について取り組みされているのは知りませんでした。これらの事業を始められた背景など詳しく聞かせていただけますか?

小田島 データサイエンティストを育成したいというニーズもさることながら、社会人向けの学び直しとしてリカレント教育の取り組みは国をあげた1つのテーマでもあります。実は新型コロナウィルスの影響により、私たちの他の事業マーケットが縮小してしまったこともきっかけでした。私たち自身も事業の方向性を一部転換せざるを得なくなり、その中で自社のビジネスの延長線上で可能なことは何かと考えた結果、私たちが持つ学習ノウハウやデータ分析の手法を外部の方々に提供する教育事業を拡大するという方向性でした。

河本 小田島様がかつて学生向けに教鞭をとられていたデータサイエンスの授業を、現在は社会人に対して提供されているとのこと。これまでの経験や知識を活かし、現在の事業に繋げられているのはまさに経験が新たな価値創造に繋がる素晴らしい例だと思いました。

小田島 さらに教育事業の一環として、商売とDXが学べるボードゲームの開発も行っています。その目的は、データ分析の仕組みやビジネスの構造、お金の流れなどを理解するためです。ビジネスの世界は複雑で、その全体像を把握するのは容易ではありません。どのようにビジネスが成り立ち、どのようにお金が流れ、どのような事象が起こるのかを正確に理解するためには、実際にその経験をすることが最も効果的です。しかし、全てを実際に経験することは難しいため、私たちはボードゲームを通じて擬似的な体験を提供し学んでいただきたいと考えました。

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wyEBIYA THE BOARD GAME(ゑびやボードゲーム)

厳しい業界環境への対応: 新たなビジネスモデルと顧客情報の活用

小田島 私たちはアフターコロナの店舗ビジネス、飲食業であったり小売業であったり、さらには観光ビジネスに新たなインパクトを与える取り組みを考えていきたいと思いました。背景には、飲食業や小売業が直面している厳しい経営環境があります。人件費の上昇、為替の影響での原価上昇、エネルギーコストの増加など、収益を圧迫する要因が増えています。しかし値上げもできない、大変厳しい状況です。

河本 現在、業界は確かに厳しい状況に直面していますよね。この状況も長期化する可能性があるように思っています。

小田島 そこでこれらの状況を打破するために、私たちは新たな事業の柱を模索、あるいは通常のビジネスの延長線上に新たなビジネスを生み出すことを考えました。その答えの一つが、飲食業における注文を通じた顧客情報の自動収集、そして顧客情報の分析でした。顧客情報の収集においては当初ハンディ端末を使って、お客様の年齢や性別などの情報を手動で入力して収集していました。しかし、これは非常に手間がかかる作業でした。そこで、目をつけたのがPOS+のセルフオーダーサービス(POS+ self order)です。このサービス導入により、お客様はQRコードで注文画面にアクセスするのですが、その際にLINE公式アカウントがスムーズに友だち追加されます。LINE公式アカウントの友だち数は驚くべきスピードで増えました。Messaging APIにはLINE公式アカウントの友だちの属性情報に基づく統計情報を取得する機能があります。これにより注文の際に自動的に顧客情報を収集できる仕組みが構築できました。

モバイルオーダーと注文の際に自動的に顧客情報を収集する仕組みを構築したことにより、手間を省きつつ、より多くの顧客情報を効率よく収集できるようになりました。

※顧客情報は顧客の同意を得たデータです

河本 顧客満足度を最大限に引き上げるため、そして効果的な施策をより細部まで考慮して実行するために、顧客情報の収集と分析に取り組まれたということですね。

LINE公式アカウントを使った観光コンシェルジュサービス 購買への新たなアプローチ

河本 LINE公式アカウントと友だちとなったお客様に対して、どのようなアプローチが考えられるでしょうか?

小田島 まず最初に考えるのは、獲得した友だちに対してどのようなサービスを提供するか、そしてそのサービスからどのように購買行動に結びつけることができるかです。一般的には、ECで商品を販売しようと考えることが多いですが、すべての企業がECを持っているわけではありません。特に私たちのような地域密着型の事業である場合、ECだけではなく、その地域の魅力を発信することも重要です。

そこで私たちが考えたのは、LINE公式アカウントを通じて、観光地を回ってもらえるようなコンシェルジュサービスを提供することでした。なぜなら、私たちのお店に来るお客様の多くは観光客であり、その地域の情報を求めていると考えたからです。

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株式会社EBILAB 小田島春樹氏

河本 そのコンシェルジュサービスについて詳しく教えていただけますか?

小田島 具体的には、観光地のおすすめスポットを提供するコンテンツを考えました。例えば、「こういうルートを回ると良い」「伊勢神宮の参拝の仕方」などの情報を提供することで、お客様にとって価値のある情報を提供しようと考えました。

そして、後日コンシェルジュサービスからPRを行い、購買行動に結びつけることができるかの実験を行っていました。これが私たちの今回の取り組みでした。このようなコンテンツがあることでお店を出た後でも顧客と引き続き良いリレーションを維持できる仕組みにできるのはないかという仮説を立てて取り組みに臨んでいました。

河本 LINE公式アカウントの活用により、顧客接点の創出と持続的な関係性の築き上げが可能になるだけでなく、顧客のインサイトまで得られるという点は、さまざまなビジネス・マーケティング戦略の展開において非常に有益ですね。

小田島 LINEは自社のアプリをダウンロードしなくても使える点も大きいです。LINEという多くの人々が既に利用しているプラットフォームでサービスを提供することでサービスをより多くの人々に手軽に利用してもらえます。

また、LINEが提供するAPIも使い勝手がよく、最近開発したサービスでは専任のエンジニアでなくてもChatGPTなど新しいテクノロジーを駆使することで開発を進めることができていました。既存の技術に囚われすぎない、新しいものを柔軟に取り入れていく私たちのスタンスだからこそ最も効率の良い方法がとれたと自負しています。

(取材日: 2023年6月: 取材/河本貴史, サポート/大場沙里奈, 鈴木敦史)

株式会社EBILAB
企業名株式会社EBILAB
URLhttps://ebilab.jp/

会社の紹介情報

EBILABは、伊勢神宮のおはらい町で150年の歴史を刻む「有限会社ゑびや」のシステム開発部門が独立した会社です。経営不振に陥っていた商売を立て直したソリューションをサービス業のDX支援として外販するほか、政府や行政、大企業、中堅・中小企業の事業やサービスを支援しています。

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